青春と幼なじみ



「ありがとうございました」




「いやいや、わしらも久しぶりに茜ちゃんのおはぎを食べれて良かったよ」




「そうですか…」




おじさんたちはまだお花見を続けるらしい。




けど私たちはそろそろ帰る準備をした。




「おーい、葉月帰るぞー」



南が葉月の名前を呼ぶ。




けど葉月は反応もしないで、背を向けたまま動こうとしなかった。




「葉月?」




心配になり、肩を掴んで少し揺らしてみる。




すると振り返った葉月の顔は赤くなっていて、トローンとしていた。




「葵……」




「え……!?」




葉月がゆらっと倒れて来て、私はよけれずに押し倒されたみたいな格好になっていた。




「葉月!?」




ビックリする南。




私もビックリだけど…。




ん…?




「葉月、お酒飲んでる…?」




何か葉月からお酒の匂いがする。




「葵、多分これのせいだ…」




上から南が見せたのは、小さなウイスキーボンボンの袋だった。




「まさかそれ食べて酔ったの!?」




「多分な。
2袋しかカラがないってことは、葉月2個食べたんだろうな…」




そういえば葉月、私たちがおはぎ食べてるとき、1人何か違うの食べてたような…。




それがまさかお酒の入ったお菓子だったとは…。




っていうか、葉月お酒弱かったんだ。




初めて知った…。




「葵…」




「うわっ!
ちょっ、葉月!?」




酔っぱらってるせいか、葉月は顔を近づけてきた。




「ち、近い…!」




離そうと葉月の身体を押すも、動かない。




「……っ!」




あともう数センチで唇と唇が触れる…というところで南が葉月を私からひっぺがした。




「おい葉月、いくら酔ってるからって俺の前でそういうこと二度とすんな!」




胸ぐらを掴まれている葉月は、トローンとした目で南を見ていた。




「…はぁ、今のこいつに何を言ってもダメみたいだな」




南がため息をついた途端、葉月の体が崩れた。




「うおっ、危ね!」




どうやら眠りに入ったようだ。




「陽気なもんだな」




「ふふふ、でも葉月のこんな姿初めて見るかも」




「…だな。
あ、せっかくだし記念に写メってやろうぜ!」




「うん!」




ケータイのカメラで、南に抱えられたまま寝ている葉月をパシャッと撮った。


















……。




南はおばさんとうまくいってなかった。




葉月はお酒が弱い。




二人は私のことをよく知っているけど、私は長年二人と一緒にいるのに何も知らなかったんだ…。









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