御劔 光の風2
黒の竜王フェスラ、これが太古の因縁の幕開けであることは明白だ。

そして度重なる魔物の出現に謎の少女が残した言葉。

「…俺の周りだけ事が起きている、そういう訳だな。」

それが何を意味しているのかは分からない。

何をしようとしているのかも分からなくなった。

「てっきり…ここが一番に狙われていると思ったが。」

カルサの言葉に二人とも考え込むように視線を落として唸る。

「皇子の行動理由を彼らは知らない筈では?」

「その筈だが…確実とは言えないだろうからな。」

千羅がジンロに問い、彼もまたあやふやな言葉しか返せない。

カルサは答えの出ない考えに入ってしまった。

何故自分が先に、それは一体どうして。

カルサは右手で左腕をつかみ、身体を縮める様に抱き寄せた。

ざわざわとする感覚は何を意味しているのだろうか。

出ない筈の答え、何故かここなら分かるような気がしてカルサは顔を上げる。

やがて風が吹き、まるで呼び寄せられるようにカルサは歩きだした。

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