叶多とあたし
入ってきた先生とは、叶多だったから。
「ー!?」
あたしが声にならない悲鳴を上げて口をあんぐりあけていると、叶多はこちらを見てニヒルに笑った。
「今日からこのクラスの担任の『遊馬叶多』だ。よろしく」
た、た、た、た、た、た、た、た、た、た、た、た、た、た、た、た、た、た、た、た、た、た、た、た、た、た、た、た、担任!?
「きゃーあ」
と、さっきよりも大きな黄色い悲鳴が上がった。
左隣では、何も知らない木下さんが
「遊馬さんと同じ名字だね!」
などと耳打ちしてくる。
そうだね……。
だって、実の兄だもんね。
冗談じゃないわ!
叶多を睨み付けると、叶多はここ数年見なかった素晴らしい笑顔でにっこり。
またもや黄色い悲鳴は大きくなった。
波乱のみが待ち受ける、あたしの高校生活の始まり始まり……。