ヤサオトコ

 沙幸の提案で、二人はホテルのバーに席を変えた。
 沙幸が二杯目の水割りを空けて、色っぽい目をした。


 空のグラスには、球形の氷が沈んでいる。
 彼女は、氷と栗崎を交互に見ている。そして、小さく囁いた。


 「氷を、二人で溶かしてみない」


 「えっ、氷をですか」
 「栗崎君さえ良かったら、ここに泊まってもいいんだけど・・・。ホテルでお酒を飲む。どう、素敵でしょう。そして、二人で氷を溶かしてみたいんだけど・・・」


 沙幸が意味深な笑みを浮かべた。


 「・・・」
 「どう・・・」


 沙幸が栗崎の顔を覗き込んだ。


 「それは・・・」


 一瞬、栗崎は躊躇した。
 栗崎は断りたかった。が、先を考えると、無下に断る訳には行かなかった。






< 104 / 326 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop