ヤサオトコ
沙幸の提案で、二人はホテルのバーに席を変えた。
沙幸が二杯目の水割りを空けて、色っぽい目をした。
空のグラスには、球形の氷が沈んでいる。
彼女は、氷と栗崎を交互に見ている。そして、小さく囁いた。
「氷を、二人で溶かしてみない」
「えっ、氷をですか」
「栗崎君さえ良かったら、ここに泊まってもいいんだけど・・・。ホテルでお酒を飲む。どう、素敵でしょう。そして、二人で氷を溶かしてみたいんだけど・・・」
沙幸が意味深な笑みを浮かべた。
「・・・」
「どう・・・」
沙幸が栗崎の顔を覗き込んだ。
「それは・・・」
一瞬、栗崎は躊躇した。
栗崎は断りたかった。が、先を考えると、無下に断る訳には行かなかった。