ヤサオトコ


 田原は煙草の吸殻を揉み潰すと、きつい表情で言葉を続けた。


 「下痢でピーピーでも、這い蹲っても、接待せんかい。それが、お前の務めや」
 「腹痛なのにですか・・・」


 「腹痛だろうが、たとえ脳卒中だろうがや」
 「そんな・・・」

 栗崎は田原の言い草に、一瞬、言葉を無くしてしまった。


 「ホーム食品はうちの大事な大事なお得意様や。それが分からんのか」
 「それは、分かってますけど・・・」


 「お前は少しも分かってへん。不景気なこのご時世にやで、ここを無くしてみろ。うちにとっては、死活問題や。それが分からんのか」
 「・・・」


 「お前の首だけでは済まへんで」
 「課長・・・」


 「次の仕事でも探した方がええで」


 捨て台詞を残すと、田原は会議室から出て行った。







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