ヤサオトコ
 
 「あっ、栗崎の事でっか。それなら、ここでは何でっから、会議室でも行きまひょか」


 女子社員たちの好奇な目から逃れる為、田原は沙幸を1階の会議室に案内した。


 「先程の続きやけど、栗崎君を本当にリストラするの」


 沙幸が田原にもう一度厳しく問いただした。


 「ええ、そのつもりでっけど」
 「そう、それなら、ホーム食品の扱いが0になる事を覚悟してね」


 「ええっ、部長に失礼な事をしたんで、リストラの対象にしましたんやで」
 「いつ失礼な事をしたの」

 「先日の宴席でんがな」


 田原が間抜けな顔で言った。


 「栗崎君は、ただお腹が痛くなっただけよ」
 「それだけでっか」


 「そうよ。それだけよ。リストラを撤回しないと、絶対に仕事は回さないから」
 「そんな・・・殺生な。部長には勝てまへんな。分かりました。上と相談してみますわ」


 田原は泣きそうな顔をしている。


 「頼んだわよ」


 沙幸はそう言い残すと、会議室を足早に去って行った。






 
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