ヤサオトコ
「千通よ。1階のロビーに居るから、すぐ下りて来て」
沙幸は、怒りが込み上げてきて早口でまくし立てた。
「わざわざお越しでっか。呼んでおくれやしたら、すぐお伺いしましたのに」
「そんな事より、早く、来て」
「ほな、すぐ下りますんで」
田原が、慌てふためいて1階に下りて来た。
「あっ、部長。いつもは偉いお世話になっております」
「挨拶なんか後回しや。それより、女子社員たちを見てご覧」
「何や、女ばかり集まって。いったい何をしてんのや」
田原が女子社員たちを見て、驚いた顔をした。
「抗議運動やないか」
「何の抗議運動でっか」
「リストラ反対の運動やないの。栗崎君、リストラされるって本当?」
沙幸が険しい表情で質問した。