ヤサオトコ

 「いいのよ」


 野乃絵は栗崎の腕に、自分の腕を廻した。
 二人は、相思相愛の若いカップルに見えた。


 「ご主人、チーズ。もっと、笑って」


 写真機を覗きながら店主が言った。


 「あの~。違うんですけど」


 栗崎が困り顔。


 「じゃ、1+1は?」
 「ニイ~」


 栗崎が、思わずニイ~と笑った。


 カシャ。


 シャッターが切れる音がした。


 「ポーズを変えて」


 店主が言った。


 「こう」


 野乃絵が栗崎の首に腕を廻した。






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