ヤサオトコ

 「完璧」


 房江は、鏡に映る妖艶な自分の姿に酔い痴れていた。


 「まだ、まだ、大丈夫」


 「どう」


 鏡にウインクをして、房江は挑発するポーズをしている。


 鏡の前から離れると、房江は若々しく見える衣装に着替えた。そして、厚化粧をして栗崎に近付いた。


 「ねえ、ダーリン」


 房江が猫なで声で。


 「だ、だ、だ、ダーリン」


 栗崎は、房江の余りの酷さに、その場から逃げ出したい心境だった。


 (まるで、チンドン屋じゃないか)


 60歳の女が、厚化粧をして、派手な服装を粋がって身につけている。


 (気持ち、わりい)


 (げ~~~)
 

 栗崎は房江を見て、思わず後退りしてしまった。











 
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