ヤサオトコ
あくる日、房江が市役所に出掛けた。
この隙に、栗崎は旅行カバンに荷物をまとめ、一目散に家を出た。
手続きの手違いで、前のマンションは、まだ引き払っていなかった。
栗崎はマンションへと向った。
マンションは、前のままだった。
栗崎は自室に戻り、ほっとした。
部屋中に開放感があった。
ピエロのような真っ赤な唇と、醜悪さは、そこには存在しなかった。
「我が家は、最高」
「ああ、生き返った!」
栗崎は生き返る思いがした。
醜悪なものを見続け、反動で栗崎は、美しいものを渇望していた。