ヤサオトコ

 冴は飲む物が決まっているらしい。
 ウエイターがお辞儀をして部屋から出て行った。


 冴がワイングラスのワインをひと口飲み、栗崎の目を見た。


 「あなたは、私に高いお酒をおねだりしないのね」
 「ええ、しません」


 「支配人に叱られるわよ」
 「叱られても、したくありません」


 「うふふふっ。正直な人ね」


 冴が、栗崎の目の奥を覗いた。


 (あなたは、何が欲しいの。お金が欲しいからこの店に入ったのでしょう。正直に言うのよ)


 冴が、栗崎の目の奥に無言で語り掛けた。


 「一つ、質問してもいいですか」


 栗崎は冴の意味深な視線に翻弄されないよう、質問を投げ掛ける事にした。






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