ヤサオトコ

 栗崎は阪神電車の野田駅近くに、2DKのマンションを借りた。
 ダンボールハウスから脱出出来た事を、郁は殊の外喜んだ。


 「まるで夢みたい」


 郁は、何度も何度も万歳をした。


 栗崎は、郁に産婦人科病院に通うよう強く勧めた。
 郁は栗崎の優しさが嬉しくて、涙を流しながら産婦人科病院へと向った。


 だが、それが郁の大きな悩みに繋がった。
 郁は産婦人科病院を、肩を落としてしょんぼりと出て来た。


 「信じられない


 病院を出た郁の第一声。


 「妊娠の兆候は全く見られないなんて」


 「嘘でしょう」


 郁は、鳩が豆鉄砲を食らったような顔で独り言を呟いた。






 
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