ヤサオトコ

 冴のオフィスは、地下鉄御堂筋線本町駅のすぐ近くにあった。
 瀟洒な8階建てのビル。その6階の一角を、冴はオフィスとして使っていた。


 その日の夜。


 (おいしそう。きっと、私好みの大人の味よ。考えただけでも、よだれが出てきそう)


 そう独り言を呟くと、冴はオフィスの場所を栗崎の携帯電話に送信した。



 待ちに待ったあくる日の午後が来た。
 その日、冴は朝からそわそわしていた。


 超高級なシルクの黒のブラジャーと、ショーツ。
 朝から、冴はシャワーを入念に澄ませ、気に入るまで化粧に細かく神経を使った。


 (今日は何も無いかもわからない。パートナーとして本決まりするだけで上首尾だ。でも、何が起こるか分からない。その時の為に万全にしておくのが、淑女というもの)


 (甘えるか。それとも、攻め立てるか。乱れるか。それとも、恥じらいの仮面を被るか)


 考えるだけで、いろいろ妄想するだけで、冴の体の芯は濡れて来た。






 
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