ヤサオトコ
その頃、栗崎はJRの大阪駅にいた。
足の向くまま、ホームへの階段を上ると、電車が止まっていた。
栗崎は、何も考えずにその電車に飛び乗った。
その電車は、姫路行きの新快速電車だった。
あてなど、無い。
栗崎はこの地から少しでも離れたかった。
子供の為だから、自分を殺せたし、殺す事も出来た。しかし、子供がいないとなると、話は別だ。
栗崎は、自分自身に正直に生きたかった。
たとえ、弱い男と言われても・・・。
新快速電車が走り出した。
(このまま、のたれ死ぬかも分からない。たとえ、そうなったとしても・・・。自分を欺いて生きてゆく事など出来ない。悔しいけど、この生き方しか出来ない。悔しいけど・・・)
栗崎は、窓ガラスの向こうを流れる景色をぼんやりと眺めながら、独り言を呟いた。
塚本駅を新快速電車が通過した。
新快速電車は、塚本駅から逃げるように姫路に向って走って行った。
(了)
この物語はフィクションです。


