ヤサオトコ
「気を付けてや。熱いから」
「そうします」
栗崎が頷いた。
「わあ、おいしそう。うちも頂こうっと」
野乃絵がケーキの箱を覗いて一言。
房江はカウンターにケーキ2個を置いた。
ケーキを食べながら房江は、栗崎に聞こえるように呟いた。
「野乃絵、今日お母さん、プロポーズされたんやで。凄いやろ」
「いややわ。その年でお母ちゃん結婚するつもり」
野乃絵は呆れた顔をしている。
「どうしょうかな。あんた、うちが結婚するのはいやか」
「相手によるわな。私かてお父さんと呼ぶからには、呼べる人でないとな」
(結婚相手は先程の客だろう)
二人の会話に耳を傾けながら、栗崎は心の中で思った。