彼は人魚姫!
「バ……バカ」


溢れる涙に混じって笑みがこぼれる。
あたしの目に飛び込んで来たのは、そう、あの日と同じ。
チョ~イケメンのすっぽんぽん。
うつぶせなのが救い。
引き締まったお尻も健在。
サラサラの髪も変わってない。
あたしはそのイケメンの右を向いている顔の方に移動して、10センチくらいの距離まで顔を近付けた。


「お帰り。しぃ」


そしてそっとキスをした。
ちょっと潮の香りがする。
冷たいくちびるは長い時間そこにいた事を教えてくれた。


「ただいま。ママ」


パチッと開いたその大きな目。
整った顔立ちに息を飲む。
こんなイケメン見たの1年振り。
もう言葉は何もいらない。
言い訳もいらない。
この1年、どうしてたかなんてどうでもいい。
今、目の前にいてくれるだけで、それだけでいい。
それが今の答え。


触れられる距離にいて。
もうどこにも行かないで。
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