彼は人魚姫!
「はぁ…」


ため息しか出ない。
空気を読んでるのはいいけど、まず、最初にぶち壊したのは誰だ?って。
せっかくいい雰囲気だったのに。
生まれて初めてのプロポーズだったのに。
でも、あのまま、しぃが来なかったら。
あたし、雰囲気でOKしてたかもしれない。
薫の事はカッコいいと思ってるし、尊敬もしてる。
店も…ずっとあたしなりに頑張って来たけど、一瞬で、しぃに奪われた。
売り上げなんて、3日で、いつもの1ケ月分を稼ぎ出した。
もう、やる気なくすよね。
紅茶の味うんぬんじゃなくて、カフェ自体の居心地とか関係なくて、たった1人のイケメンで全てが簡単に変わる。
それは、だからって、しぃのせいじゃない。
それも分かってはいるんだけど。
あ…、あたし、しぃに嫉妬してる?
仕事、取られて。


「ママ、さっきの人の事、好きなの?」


いつの間にかあたしと並んで歩いてる。
なんだろ?
この安心感。
このままずっと、歩いていたい。

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