紅蓮の鬼



「じゃぁ、俺はここで」


いつの間にか、見慣れた風景が目に入り始めていた。


そしてここら辺は、見張りの目の届くか否かの場所。


きっとワタシが一歩踏み出せば、やって来るだろう。


「またな、淋」


「あぁ」


ニッと楓太が口角を上げた。


踵を返して、歩いていく。


「ありがとう」


小さくなっていく背中を見て、言った。


ザァァと、また強く風が吹いた。


楓太が右手を上げた。





< 438 / 656 >

この作品をシェア

pagetop