紅蓮の鬼

...side淋



汗が頬を伝う。


その時ワタシは、肩で息をしていた。


「ちょっと竜胆、体力無くなった、とか言わないでよ?」


「………………」


そんなワタシを見かねた桜が怪訝そうな顔をする。


今の彼女は〝淫乱女〟の顔ではなく、〝紫鬼の桜〟の顔をしていた。


「あともう少しよ」


彼女の目が、鋭く光る。


「二人共伏せてッ!」


突然、空木の切羽詰まった声が聞こえた。


彼の言った通りにすぐ伏せると、ヒュンッと無数の銃弾が通過した。


「…あ……危な…」


桜が引き攣った顔をしてゆっくりと立ち上がる。


あのまま立っていれば、ワタシ達は脳に銃弾が食い込んでいただろう。




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