紅蓮の鬼


「あら、紫苑。鴉との戯れはしなくていいの?」


さっきの引き攣った顔は何処へ行ったのだろう。


桜は横目で空木を見る。


「いや、わんこからのが途切れたんだよ」


空木は不思議そうな顔をして、「どしたんだろ?」とワタシが楓太に教えた場所の方を見る。


……どうやら彼は桜の皮肉には全くに気付いていないようだ。


「放っておけ。どうせ変な妄想でもしているんだろ」


ワタシはそう言い、進む。


「しっかし、どうしたモンかね。人間っていうから前みたいにバンバン攻撃仕掛けてくるのかと思ったら、全然そんなことないし」


桜が神妙な面持ちで言った。


「時代が違うぞ、時代が」


ワタシは半目になった。




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