ケータイ小説 『肌』 著:マサキ
でも、そんな感情を読み取られたくなかった私は、あえて無表情を作った。
「ありがとな」
礼を言って微笑を浮かべるマサキに、
「早く返してね」
と、そっけない声で返した。
私のケータイを手にしたマサキは私達のいる場所からいったん離れ、壁際に沿って配置されたカウチソファーに座り、私のケータイを操作している。
アサミはヒロと私に目配せし、声をひそめ、ざわつく会場でも何とか聞き取れる声でマサキの方をチラ見しながら言った。
「電話なんてしてなくない?
今日のマサキ、やっぱり変だよ。
ミオのケータイ借りるのはいいとして、職場の番号なんて借りたケータイに登録してあるワケないからかけられないし、名刺も持ってないみたいだし、ウソっぽくない?
それに、ミオに彼氏がいるって言った時、マサキ、あからさまにショックって顔してたし……」
マサキがウソをついて私のケータイを借りたかもしれないという事より、アサミの指摘の方が気になった。
「そりゃ、元カノの今カレ話聞いて喜ぶ男はいないだろ」
ヒロは取って付けたような言い訳を、口にする。
わかるけど、雑誌とかでひんぱんに使用されてそうな使い古された言葉だ。