ケータイ小説 『肌』 著:マサキ
私にとって、夏は苦いだけの季節。
鼻から空気を吸い込むと同時に、夏に漂う秋の気配をうっすら感じ、涙が出そうになった。
この匂いに、私は毎年苦しんでいた。
私の大学の夏休みは、約2ヶ月ある。
大学1年の夏休み、まるまる2ヶ月マサキと音信不通になり、その後別れを告げられてから、私は、夏の訪れがこわくなってしまった。
現在、22歳になるまで、毎年マサキへの想いを抱え、夏を過ごした。
今年の夏休みは、失恋以上につらいものとなったことに、情けなさすら感じた。
4年ぶりにマサキと顔を合わせ、気まずいながらも、アサミやヒロのおかげで楽しく過ごせた同窓会。
けれど、マサキの一言で、それなりに面白かった場はひどく色あせてしまった。
あの後、ヒロと会話するタイミングも見つからず、同じく微妙なテンションのアサミと、二人で終電に乗って帰ってきた。
私に未練がなかったら、あんなマサキの言葉にいちいち傷つかずに済んだはずだ……。
22年も生きてきたオトナの女が、失恋の乗り越え方のひとつも知らないなんて、情けなくて涙が出てくる。
この涙が、マサキに対する未練ゆえとは、死んでも思いたくない……。