ケータイ小説 『肌』 著:マサキ

《Mの何を見ても、全部かわいい。

Mの家。リビングのテーブルに座り、隣同士、肩を寄せ合い宿題をこなしている時。

彼女のクシャミでこっちにツバが飛んできた時ですら、俺は彼女を抱きしめていた。

「寒いの? だったらしばらくこうしてろ」

普通の人だったら、自分のノートや手に他人のツバがかかったら「汚いな、口に手やれよ」と文句のひとつでも言うんだろうが。


俺も、自分自身に驚きの連続だった。


こんな目で彼女を見る日が来るなんて、入学当時の俺は思っていなかった。

なぜなら、彼女への第一印象は、あくまで「しっかり者」だからだ。


宿題や日直の仕事。

そうじ当番。

Mは、どんなことでも自分一人で完璧にやってのけてしまう。

他の女子や、Mの友人·Aみたいに、目の前に立ちはだかる義務にグチを言ったりせず、「手伝って~♪」と、周りに甘えたりもしない。

そんな彼女を、俺達は影で心配しつつ、強い女だと尊敬もしていた。


でも、そんなMにも苦手なものがあった。


Mの両親は、仕事で留守がちだ。

本当なら、Mが家事全般をやらなければならないのに、

「苦手だから、やらない」

そう言い彼女は、出前のピザや寿司、コンビニ弁当を主食としていた。

金のない日は、スーパーで安売りしている80円のカップラーメンを常食。》

< 69 / 187 >

この作品をシェア

pagetop