ケータイ小説 『肌』 著:マサキ
《Mの何を見ても、全部かわいい。
Mの家。リビングのテーブルに座り、隣同士、肩を寄せ合い宿題をこなしている時。
彼女のクシャミでこっちにツバが飛んできた時ですら、俺は彼女を抱きしめていた。
「寒いの? だったらしばらくこうしてろ」
普通の人だったら、自分のノートや手に他人のツバがかかったら「汚いな、口に手やれよ」と文句のひとつでも言うんだろうが。
俺も、自分自身に驚きの連続だった。
こんな目で彼女を見る日が来るなんて、入学当時の俺は思っていなかった。
なぜなら、彼女への第一印象は、あくまで「しっかり者」だからだ。
宿題や日直の仕事。
そうじ当番。
Mは、どんなことでも自分一人で完璧にやってのけてしまう。
他の女子や、Mの友人·Aみたいに、目の前に立ちはだかる義務にグチを言ったりせず、「手伝って~♪」と、周りに甘えたりもしない。
そんな彼女を、俺達は影で心配しつつ、強い女だと尊敬もしていた。
でも、そんなMにも苦手なものがあった。
Mの両親は、仕事で留守がちだ。
本当なら、Mが家事全般をやらなければならないのに、
「苦手だから、やらない」
そう言い彼女は、出前のピザや寿司、コンビニ弁当を主食としていた。
金のない日は、スーパーで安売りしている80円のカップラーメンを常食。》