seven kisses
彼は私の手を掴むと、人の波をかき分け、どんどん歩いて行き、荷物搬入口から外へ連れ出した。

仕方がないから、されるがままについて行く。



すると、建物と建物の間に、中庭みたいにポッカリ空いた小さなスペースが現れた。

植え込みの木が数本あり、その脇にはご丁寧にベンチまである。

知らなかった。

展示場にこんな場所あったんだ。



「はい、座って。ここなら、イベント中はあんまり人来ないから。」

「こんな場所あるの、知らなかった。さすがイベンターだね。」

「まぁね。」



近くにあった自販機でジュースを二本買うと、片方を差し出しながら、彼は隣に座った。

嬉しいけど、この人、どうして私をこんなに気にしてくれてるんだろう。



「あ、ありがとう。」

「美希さんさ、言いたいこと、いっぱいあるでしょ?聞いてもわからないかもしれないけど、俺で良ければ聞くから言っちゃえよ。案外スッキリするかもよ。」

「へ.......。」

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