平成のシンデレラ

「やぁ優登くん!久しぶりじゃないか。息災かね?」



・・・・・くそう。



また思わず舌打ちをしそうになるのを
辛うじて堪えて無理やり笑みを作った。



「はい。お陰さまで。西園寺卿もご壮健で何よりです」
「いやいや。最近は年のせいか少々疲れやすくなったよ。
年寄りがいつまでも出張っていてはいかんな。そろそろ引退だ」
「何を仰いますやら」
「君のような素晴らしい後継者がいるお父上が羨ましいよ」
「私などまだまだです」
「いやいや。私は君を買っていてね。君は大器だよ」
「恐縮です」



ったく面倒くせえ、と胸のうちで呟いた。
これだから嫌だったんだ。



「さぁ、あちらで一緒に飲もうじゃないか」
「・・・はい」


馬鹿野郎。香子のヤツさえ側に居れば
麗佳も西園寺卿も適当にあしらえたのに。


「君とはゆっくり話をしたいと思っていたのだよ。楽しみだ」


答える代わりに曖昧に微笑んだ。
こうなるとなかなか解放してはもらえない。
さあさあ、と背を促されるまま歩き出して小さくため息を落とした。
兄さま!と駆け寄ってきた麗佳に腕をとられたまま
ちらりと時計を確認して、今日のうちには戻れないだろうと腹を括った。


帰ったらただじゃ置かないからな。
この落とし前はきっちりつけてやる。覚悟しとけよ?香子。



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