「1/4の奇跡」左側の君に【完】
勤務時間が終わり、
お父さんは何も言わずに、
いつの間にか帰ってしまっていた。
夜8時。
拓人の携帯もアドレスも知らない。
本当に来るのかもわからない。
広場のベンチでとりあえず待ってみようと思い、
ベンチに座って、夜空を眺めていた。
科学館の電気も消え、
星が一段と輝きを増した時、
駐車場の方から、足音が聞こえてきた。
見上げるのをやめて、
足音の方を見ると、
背の高い人影がこちらに近づいてきて、
私の前に立った。
「拓人・・・」
目の前に立った拓人を、
座ったまま見上げると、
拓人の後ろに星が見えなくなった。
拓人しか、見えなかった。
拓人は自分の首から、紐を引っ張って、
星時計をはずして、
私の首にそっとかけてくれた。
そして、とても切なそうな顔で私を見つめた。
「なんでずっと・・・ひとりでいたんだよ・・・」