「1/4の奇跡」左側の君に【完】
そのまま見上げていたら、
目尻から涙が一粒こぼれた。
右目からも、左目からも、
どうしようもなくこぼれ落ちる。
拓人の両手が伸びてきて、
私の両頬を包み込んだ。
温かい・・・
拓人の手の上に、自分の手をあてた。
ごつごつとした、大きな手。
温かい手。
じっと私を見つめている瞳は、キラキラと輝いていて、
どうしようもなく、
もう・・・どうしようもなく、
好きだと思った。
「拓人が好きだよ・・・
拓人は・・?」
拓人は、私の頬に手をあてながら、
苦しそうに唇を噛み締めて、目をそらした。
「俺・・・昨日も言ったけど、
難聴の遺伝子を持っていて、
耳の聞こえない子が生まれやすいんだ」
私は、手を離して立ち上がり、
拓人を抱きしめた。
「もう何も考えなくていい。
もう、ひとりで抱え込まなくていいから・・・
大丈夫だから。
大丈夫なんだから・・・拓人・・
拓人の辛いこととか、苦しみとか、
全部、私にちょうだい・・
私が全部、幸せに変えてあげるから。
今までの分も、全部
これからも、全部・・・
私が幸せに変えるから。
もう、何も考えなくていい
なんにも考えなくていいから・・」