モラルハザード
ほどなく、電話を済ました森川が席に戻ってきた。
「…あ、すみません、仕事の電話だったんで、失礼しました」
「いえ、お忙しそうですね、お仕事」
嫉妬の感情が出ないようにと、紅茶を一口ふくんだ。
「ええ、おかげさまで。
今、とってもいい話しにめぐり合いましてね、アジア地域に向けての宣伝活動の
話しなんですよ…」
森川は興奮気味に先ほどの電話の主からの話をした。
難しいことはわからなかった。
ただ、その話がとても「儲かる」話で
「早く」契約したものしか特典がないことだけはわかった。
「すっごいタイミングですよ、投資しがいがある話しです。
なんせ、配当が毎月20万以上が確実なんて
投資話、そうそうない」
さも楽しそうに話をする森川を見ていると、奈美の顔が透けて見えた。
こんな儲け話を聞いて、奈美はまた喜ぶのだろう。