モラルハザード
「森川さん、そのバックは差し入れですか?」
さっき、真琴と出会った時に落としたバックの中身は、陽介の着替えだった。
何をどうしてよいか、わからないが
着替えくらいはいるだろうと思い、用意してきた。
「はい、そうです。あの、私も、主人と話が出来ますか?」
どうしたらよいか、何もわからなかった。
この弁護士でよいのかすら今はわからない。
とりあえず、陽介と話がしたかった。
そして、本当にそんな会社のお金を横領したのかも尋ねたかった。
「いえ、今は奥さんは接見することはできません。
何かありましたら、私がご伝言しましょう」
仕方なく、私はバックを園部弁護士に手渡した。
「ところで、ご主人は他にも何かありますか?
…なんていいますか、他にも…このような…」
頭によぎったのは
引っ越す前に届いていた地裁からの封書だった。
だが、そのことを話した方がいいのかどうか、迷った。
「森川さん、何でも隠さずおっしゃっていただかないと
私も正確な弁護活動が出来ません。」
「…そういえば、横浜地裁と静岡地裁から何か封書が届いてました。
中身は確かめてませんが…」
そう聞くと、園部弁護士は険しい顔つきになった。
「恐らく民事でも訴えられているんでしょう…」