モラルハザード


園部弁護士は、ふぅとため息をついて宙を見上げた。

そして意を決したように、私の方に向き直した。

「森川さん、今回のこの事件、私はご主人のお力になるために参りました。

小さい子供を抱えてご主人が逮捕され、動揺されている奥さんも気の毒だった」


私は園部弁護士の目を見た。

目尻の下がった優しげな瞳だが、眼光の鋭さもある瞳だった。


「弁護士というのは、依頼人の利益になるよう働きます。

今回の場合、ご主人が罪に問われぬよう弁護し、早期に釈放されること

これが、あなた方、依頼人の利益なるかと思っています」


「はい…」


「しかし、本来は罪は罰せられねばなりません。償わなければなりません」


「………」


「法律は、もろ刃の剣です。使い方によって、正義にも悪にもなります」


この人は何を言わんとしているのか…
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