モラルハザード


「森川さん、今回、私はご主人が罪に問われないように

つまり刑法で罰せられないように法律を使います。

しかし、もし、ご主人が本当に罪を犯しているのなら

きちんと謝罪し、迷惑をかけた人たちに、被害弁済をしてほしいんです」


「…はい…」


この人は…


「森川さん、刑法は免れても

逃れられない法ってものが世間にありますよ。

私はそんなことを随分見てきました」


…きっとこの人は、正義の人なんだ。


HPに掲げれた『社会派弁護士』の文字がよぎる。


「自分の心には嘘はつけないものです。

そんなことをして生きていっちゃダメなんです。

末路は悲惨だ。

もし、そのことに、ご主人が気が付かないのであれば

奥さん、あなたが、教えてあげるべきですよ」



私は、なぜだか、涙があふれてとまらなかった。

陽介が逮捕されたことからの、これからの不安より

これまで犯した罪の大きさを、どう償うべきかの不安の方が

大きくなったのだろう。


園部弁護士の言葉に、私の胸の奥の奥にしまっていた

何物かがあふれ出したのだろうか。

そして、それが、涙となったのか…

私は涙が止まらず、子供のように泣いた。



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