モラルハザード
「…たったそれだけでいいの?」
思わず、そう漏らしてしまったのは
この間のプリスクールの後、薫さんとお茶をした時。
真琴からのプリスクール後のランチ誘いを断り
薫さんと二人きりで代官山のカフェでお茶をしたのだ。
山下先生のお茶会に入るための「奥の手」というのを聞くために。
莉伊佐と陽太くんが仲良くカフェのキッズスペースで遊んでいる。
その姿に優劣などない。
しかし、今の時点で、陽太くんは一歩リードしているのだ。
目には見えないが、山下先生のお茶会に参加し
聖英への近道切符を手に入れているのだ。
莉伊佐がきゃっきゃっ笑い、陽太くんに自分が持っているおもちゃを手渡した。
莉伊佐──
もう、何も渡さなくていいのよ。
ママが、必ず、手に入れてあげる。
聖英の切符を手に入れてあげるから…。