モラルハザード
「長野はいいよ。景色はきれいだし、空気もうまい。冬はスノボやり放題だよ。莉伊佐にも、教えてやりたいな、スノボをさ」
私の刺々しい様子など、亮太はまるで気にとめていない。
「何、のんきなことを言ってるの?莉伊佐はこれからお受験があるのよ。
お教室も決まって、来月からは、とても有名な先生にご指導も受けることにもなってるの。
せっかくうまく動き出したのに、こんなじゃ、台無しじゃない」
私は悲鳴をあげるように言い放った。
「なぁ、杏子、俺はもともと、莉伊佐に小学校受験をさせようなんて思ってないよ」
え…
「むしろ、こうなったら、地方の小学校で伸び伸びやるのもいいんじゃないかって思ってる」
「ちょ、ちょっと待って。じゃ、今までは何だったの?私がお教室に行ったり、お受験のことを調べたり。亮太、何も言わなかったじゃない」
今更…何…
「…聞かれなかったじゃん。受験をするとか、教室行くとか、杏子、俺に聞いたことないじゃん」
「な、何よ、だから、拗ねてるの?私がすべて、何も聞かずに勝手にやってるから、だから、そんな反対なことを言ってるワケ?」