モラルハザード
「そんなんで、ばあちゃんの施設へのお金や不作もあって、仕事もままならん。
だから、真琴、悪いけれど、今までみたいに、おまえのとこに、その…」
「お父さん、そんなの大丈夫。
私、貯金もあるし、透の仕事もまた入ってくるし」
透のあの様子では当分、仕事なんて入ってこない。
貯金なんて、森川の投資につぎ込んで残ってないのに…
「…そうか、悪いな…、ほれ、斗夢、じっじの家に着いたぞ」
玄関から母が出てきた。
少し見ない間に、またずいぶん歳をとったと感じる母を見ると
やっぱり、もう実家に頼ることは出来ないと確信する。
「ばっばー」
母に飛びつくように駆け寄っていく斗夢の背中を、ぼんやりと見つめながら、スマホのカメラのシャッターをきった。
薫さんのお別れランチ会のお金、プリスクールの月謝、新しいお教室の入会金…
そんなことがぐるぐると頭の中をめぐる中
母と戯れる斗夢の様子をブログにアップした。