モラルハザード
「おまえには、心配かけると思って、いっとらんかったが
ばあちゃん、認知症が始まった。
その面倒をみるのが、今は大変だ。
かあさんは四六時中、ばあちゃんから目が離せなくて、まいっとる」
斗夢のアニメの歌声が車中に響き渡っている。
「ただでさえ、不作が続いて、仕事が大変だいうのに
ばあちゃんの世話が重なってどうにもならん」
ハンドルを持つ土くれだった父の手をみつめる。
「それでな、ばあちゃんを施設に預けようと思っとる。
いや、それしか、もう道はない」
おばあちゃんを施設へ…
いつも、私と斗夢を可愛がってくれて、困った時はお金だって
送ってくれた。
森川の投資話の時も、何も聞かずに50万を振り込んでくれた。
優しいおばあちゃん…
そのおばあちゃんが痴呆に…
そして施設に…
それは、同時に、私の大切な資金源がなくなることを意味していた。
そして、そんなことを瞬時に考える自分が情けなく、恐ろしかった。