モラルハザード


言葉に詰まるほど嬉しかった。

今まで一人でどれほど心細かったか。

やっと救いの手を差し伸べてくれる人が出てきたのだ。


でも…なぜ…

こんなにしてくれるの?…


「ご主人には大変にお世話になったんです。今回逮捕されたという話を聞いて

とても心配しておりました。こんな不当な逮捕許せません。

すぐに奥さんとお子さんの元へ、ご主人を返してもらいましょう」


陽介が帰ってくる。

元の生活に戻ることが出来るんだ。

そう思うと心が弾んだ。


私は右田の言葉を受け入れ、園部弁護士を解任し、右田のいうところの新しい弁護士に変えた。


何日かぶりに食欲が戻り

向日葵の好きなカレーライスを作って一緒にほおばった。

ベランダから見える東京の空は今日は澄んで見えた。


でも──


これが破滅への始りだったとは

その時の私は気づくことが出来なかった。




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