モラルハザード
「真琴…いつの間に、こんな借金したんや…」
透は力なくため息をついた。
「…ごめん、透…」
他に何も言うべき言葉がなかった。
謝るしか出来なった。
「…いや、元はといえば、俺のせいや。
真琴に全てを任せきって。俺、好きなことばっかりして。
ごめんな…」
涙があふれてとまらなかった。
透のせいじゃないのに。
私がママ友のみんなと同じように振る舞いたくて
見栄をはったばかりに、使ったお金なのに。
しかも、欲を出して、森川にも騙された。
すべて、私のせいなのに…。
「真琴、このことも、俺に任しとけ。何とかする。だから、おまえはゆっくり
体を休めろ。お腹の子のために…」
握ってくれた透の手があたたくたくましかった。
不安定にゆらゆら揺れていた心が、久しぶりに安心に包まれた思いがした。
もう、やめよう。
私はベッドの上で一つの決心をした。
プリスクールを辞めて、身の丈にあった生活をしよう──
そう決めると、心が軽くなるのを感じ
私は久しぶりに心地よく眠りに落ちた。