モラルハザード

「真琴、大丈夫か?…」

心配そうな透の目は、少し生気が戻ってきたように思えた。

あの薬物事件以来、透の目は死んでいるようだったから。

「切迫流産で2週間安静入院やて」

「入院!…そんなお金ないよ…」

ベッドから起き上がろうとした私を透が制止した。


「真琴、おまえにこんなに負担かけて、悪かった。

Rさんのことがあってからなんかもう、どうでもよくなってたんや。

あほやろ。おまえや斗夢やお腹の子がいるのに、何やってねんやろな、俺」


「透…」


「きっと、お腹の子も俺に怒ってるんや、パパ、しっかりしてって」


私はお腹を見つめた。

そう、私も何やってるんだろう。

ママのことも怒ってるんだよね、きっと。



「真琴、それから、これ…」

透が手に持っていたのは、借り入れている消費者金融からの督促状。

ずっと隠していたのに、透がここに来る時に、保険証などを探して

引き出しを開けた時に、見つけたらしい。

とうとう見つかってしまった。

私は顔から色を失った。



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