モラルハザード
「奈美」
はっと我に返った。
陽介は不敵な笑みのままだった。
「ほっといたらええんや。そんなん騙される方が悪いんや」
──騙される方が悪い
その言葉こそが陽介のこれまでの生き方を示す言葉なのか…
「な、奈美、これからも、こんな上手い鮨や、きれいな服やバックも買いたいやろ」
そう続けた陽介が、どこか遠くにいるように思えた。
私は首を縦にすることも横にすることもないまま
膝で眠る向日葵の髪をただただ撫で続けた。