モラルハザード
マリッぺは言った『このことは、きっちり返ってくる。
それが悪いことなら倍になって返ってくる』と。
もしも、これが本当に悪いことなら、このままでいいはずがないのだ。
訴えた会社だけでなく、ブログの被害者という人たち、太田、地裁の封書…
このままにしていたら、これらの人たちの恨みは
消えることはないのではないか。
「奈美、どうしたんや。さっきから黙りこんで」
「あ、陽介、でも、相手の会社とはきちんと話した方がいいんじゃない?
横領なんて何かの思い違いでそうなったとしても
ちゃんとお金だけは返した方が…」
あの最初の弁護士、園部弁護士とも約束をした。
必ず被害弁済すると。
『森川さん、刑法は免れても、逃れられない法ってものが世間にありますよ。
私はそんなことを随分見てきました』
そう話した時の園部弁護士の優しげな中にある鋭い眼差しを思い出す。
刑法は逃れたとしても、本当に罪があるなら、逃れらないのではないか…