モラルハザード
こんなに優しい言葉をかけてもらえる資格が私にあるのだろうか。
散々、我がままばかり言って、単身赴任もさせて。
それでも、まだ、こんな私を好きでいてくれるなんて。
周りのことに気をとられて、目の前の亮太を、大切にしていなかった私なのに。
「杏子、一緒に長野に来てくれないか?あっちは何もないけど、空気がおいしくて
自然がいっぱいある。でも、そんなところに一人でいて、俺、寂しいんだ。
杏子と莉伊佐が側にいてくれたらって毎日考えてた」
「…亮太」
うなずくしかなかった。
今まで、あんなにこだわってきた聖英受験が泡のように消えてしまった。
もう、この人を大切にして生きていくしか、今の私にはないのだと思った。