モラルハザード

なぜ、太田が…?

右田が…?

混乱して口もきけない私に太田が答えた。

「右田さんとは以前に森川から紹介を受けたビジネスパートナーなんですよ」

太田がにやっと笑いながら、右田と視線を合わせた。

陽介は猿ぐつわをされて、う―うー言っている。

「奥さん、あんた、あの後、引っ越したでしょ、随分探しましたよ。

居場所がわからなくなって、ほとほと困っていたところに

ばったりと右田さんと出会いましてね…」

陽介がまた、わーわー言いだし、右田が側にいた若い男に目配せした。

その若い男が、陽介の腹をどすっと殴り

陽介はそれきり気を失ったのかぐったりした。

それを横目で見ながら、太田は続けた。

「それでね、私の話しをしたんですよ、そしたら、右田さん、同情してくれましてね、

森川を探してくれたんです」

右田がにやにやして話しを聞いている。

こんなに人相の悪い男だっただろうか。

その顔は、あの警察から陽介を救ってくれた時の顔とは全然違う別の顔だった。
< 383 / 395 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop