求*幸福~愛しい人はママだった~【完】
●翔哉side
少しだけうとうととしてしまったのか、体がガクッとして、目が覚めた。
握っていた彩乃の手を布団の中に入れてやり、座り直す。
背中と頭はかすり傷と、打撲のようで、数日もあれば治るらしいが、刺された腕はしばらくは上手く使えないかもしれない…神経は切っていないようだが、と医者は言っていた。
料理が好きな彩乃は包丁が持てないと分かったらガッカリするかな…なんてボンヤリ考えていた。
「……ん…っ…」微かに声が聞こえた…『あれっ?』と思い彩乃を見る。
眉間に少しシワがより、確かに彩乃が動いて目覚めそうな素振りだ。
「彩乃?翔哉だよ…聴こえる?彩乃…ごめんな?俺の…ファンのせいで…怪我までさせた…ほんと、ごめんな…」額にかかる髪を少し避けながら話しかける。
まぶたがひくひくっと動き、ゆっくりと上がっていく。
「彩乃っ…!…よかったぁ…」