【砂漠の星に見る夢】

すると、近くで仕事をしていた新人の侍女が笑顔で身を乗り出し、


「ネフェル様は、それはもう奥様を大事にされているんですよ。王族の方は数人の妻をめとられるのが普通のことなのにネフェル様だけは奥様お一人だけを大切にされているんです。本当に仲睦まじいとのことで、皆羨んでいるんですよ」


と嬉しそうにそう告げた侍女の言葉に、イシスの心は切りつけられるように痛んだ。


クフは不愉快そうに眉をひそめ、「そなたは、もう下がれ」と侍女に言い放った。


侍女は目を丸くしながら「は…はい、失礼します」と逃げるように部屋を出て行った。


クフはイシスの髪に手を触れながら、囁くように言った。


「あなたが今も兄上を想っているのは知っています。
ですが、あなたはもう5年も前から私の妻だ。そして兄上はもうあなたのことは忘れているように思われます」


イシスは何も言わず、外の景色をなんとなく見たあと、息をついた。



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