【砂漠の星に見る夢】
こうして妻を胸に抱きながらも、色鮮やかに浮かぶはイシスの姿。
胸が、苦しい。
想うことも、もう許されないのだろうか?
――イシス……
ナイルの川岸で洗濯をしていた絶世の美女。
王子の帰国なんて興味がないと、あっけらかんと言い放った彼女。
互いに背中を合わせ、刺客と戦ったあの日。
二人でピラミッド建造に携わり、笑い合ったあの日。
教会で愛を誓い、口付けした。
短い間だった。
抱きしめて、口付けして、手を取り合い未来に胸を弾ませていた。
自分が生涯、共に生きていくのは彼女しかいないと誓った。
16の誕生日、日暮れまでの永遠とも思える長い時間、ただひたすらイシスを探し続けた。
――この宮殿の中でクフに捕らえられていたことなどとは夢にも思わずに。
会いたくて、会いたくて、ずっと探していた。
でも今や、彼女はクフの妻。
もう、何もかも遅すぎたと言うのだろうか?
ネフェルはターナを抱きしめた腕に力をこめ、強く目を閉じた。