【砂漠の星に見る夢】
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ターナが部屋を訪れた後、イシスの身体は食事を受け付けなくなった。


食べても嘔吐するようになり、塞ぎこむことが多く侍女たちはイシスが病気になったのではとオロオロと心配し、クフはできる限り、そんなイシスに寄り添おうとしていたが、へレスの強い命令で夜には第一王妃や第二王妃の元に向かわなければならなかった。


クフはすまなそうにしていたが、彼の側にいると余計に具合が悪化すると感じていたイシスは心底、ホッとしていた。


「イシス様、お水をお持ちしました」


コップを手に訪れた侍女・マヤに、イシスは「ありがとう」と力なく微笑み、ゆっくり上半身を起こして水を飲み、フゥと息をついた。


「イシス様、何か食べないと」


背中を労わるように撫でるマヤに、


「ありがとう、でも、受け付けないのよ。別にわざとやっているわけではないのよ。食べてもすぐに戻してしまうし……」


とイシスは目を伏せた。


「イシス様、そんなことでは死んでしまいますよ」


涙目でそう告げたマヤに、死んでしまう……、とイシスはその言葉を心で復唱した。


「それも、いいかもしれない。病気で亡くなる分には、お父さんもお母さんも酷いことをされずに済むかもしれないし」


イシスはそう言って、ゆっくりベッド横たわった。


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