【砂漠の星に見る夢】
突然の言葉にジェドは、面食らったよう目を丸くした。
「なにを突然、僕がファラオになんて……王子は山ほどいるじゃないか」
「確かに王子は山ほどいるけど君はファラオのお気に入りだし、何より最も権力のある血筋の姫と結婚した。君がファラオになることは火を見るよりも明らかだよ」
「藪から棒になにを言い出すんだよ」
「ジェド、この国のファラオになるということは想像を絶する権力を与えられると同時に、茨の道を突き進むこととなる。どうか自分を見失わずに常に民衆のことを思い、政治を執り行って欲しいと願うよ」
真剣な眼差しを見せるヘムオンに、ジェドは眉をひそめたあと、クスリと笑った。
「子供の頃から何度も同じことを言わせないでくれよ。僕がファラオになったら、すぐにヘムオンにバトンタッチするよ。それが叶わないなら、ずっと宰相でいてもらうさ」
そう言って笑顔を見せるジェドに、ヘムオンは思わず笑った。
「まったくジェドは子供の頃から変わらないなぁ」
「ヘムオンも変わらないよ」
二人は顔を見合わせ笑い合った。
優しく純粋で皆に愛されるジェド。
君ならば素晴らしいファラオになるに違いない。
ヘムオンはジェドの笑顔を見ながら、心でそう思っていた。
――この夜が、ジェドと過ごす最後の夜となった。