【砂漠の星に見る夢】
「早く毒見係を倍に増やして、私の軍隊も作らなければ……」
とヘレスは呟き、名案のように顔を上げた。
「そうだイシス、そなたの言うことならばファラオは何でも訊くであろう。早く私の軍隊を作るようファラオに進言してはくれないか!」
そう言ってイシスの腕をつかんだ。
「ヘレス様……何をそんなに怯えておられるのですか?」
イシスが呟くようにそう訊ねると、シンとした静けさが襲った。
「怯えている?この私が?」
ヘレスは顔を引きつらせながら、イシスを見た。
「毒見係や軍隊を増やしたなら、あなた様はお幸せになれるのですか?」
「幸せ?」
ヘレスは眉をひそめた。
「……何を言っている、私は女としての栄華を極めたのですよ?
大神官の娘に生まれ威光と美貌を持って王妃となり、そして今やファラオの生母・皇太后です。地位も名誉も財産も手に入れました。
誰もが私を羨み、平伏するんですよ?」
ヘレスは強い口調で言い放ち、穏やかな表情を浮かべるイシスを見た。
「そんな私が幸せじゃないはずが……」
そう言いかけ、断言できないように口をつぐみ、悔しそうに唇を噛んだ。