【砂漠の星に見る夢】

「そういう……そういう、そなたは幸せなのか?」


そう問われ、イシスは柔らかく微笑した。


「この宮殿に来た頃は生ける屍となっていましたが今は子供たちもつつがなく成長し、優しい夫と、思いやりのある侍女に囲まれ、私は贅沢すぎるほど幸せでございます」


そんなイシスに、ヘレスは目を見開いたあと高らかに笑った。


「なんと! 贅沢すぎるほど幸せだとは傑作な。
そなたほど残酷な女はこの世にはいないであろう。仲のよい兄弟の仲を裂き、ネフェルの妻を嫉妬に苦しめ、妻が夫に毒を盛る結果を生ませた。そうネフェルを殺したのは間接的にそなたということになる。かつて愛した男を死に至らしめながらも幸せだとは」


イシスは目を伏せて、キュッと手を組んだ。


「そうですね。ネフェルを死に至らしめたのは誰でもなく、私なのかもしれません」


そう告げたあと、ゆっくり顔を上げた。


「ネフェルの死後、私も自分を責める日が続きました。
私が現れさえしなければ、と思ったことも何度もあります。
……ですが、やはり最後は彼に出会えて良かったと思ってしまう自分がいます。そして思うのです。

ネフェルは死の直前まで愛する者を気にかけ、誰を恨むことなく自分の身に降りかかった運命を柔軟に受け止めていました。
そんな彼の姿を思い出しては、私も自分の身に降りかかるすべての出来事を恨んだり悔やんだりすることなく、柔軟に受け止め、すべてを許し生きて行きたいと思うようになりました」


穏やかな口調でそう言ったイシスに、ヘレスは圧倒され、呆然と立ち尽くしていた。
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