【砂漠の星に見る夢】
町娘たちは一礼したあと一人ずつネフェルに花束を手渡し、「お帰りなさいませ、ネフェル様」と優雅に頭を下げた。
やがて自分の番となったイシスは皆と同じように一礼しネフェルのすぐ前まで歩み寄る。
「やぁ、洗濯物は滞りなく?」
ニッコリと微笑みながらそう告げたネフェルに、イシスはぶっきらぼうに花束を手渡した。
「……信じられません、どうして名乗ってくださらなかったんですか?」
「自己紹介する間もなかったじゃないか。最後にはノックアウトされるし」
そう言って、腹部に手を当て、「実はまだ、ちょっと腹が痛いよ」とコッソリ耳打ちする。
「それはそれはどうもすみません」
「いやいや、気にしないで。
そうだ、キスしてくれたら許してあげるよ」
「……許してもらわなくても結構ですし、ここでまたあなたを殴ったなら、私は処罰を受けるのですから、そんなことを言って私を困らせないでいただけます?」
呆れたように目を細めるイシスに、ネフェルは楽しくてたまらないように目を細める。
「やっぱりいいね、君は。
それになんて美しいんだ。花束がかすんで見えるよ」
そう言ってネフェルはイシスの蒼い瞳を真っ直ぐに見つめた。
不意に顔を覗き込まれ、イシスの鼓動がバクンと跳ねたが、それを隠すように冷静な表情のまま、「……ありがとうございます」と会釈をして背を向けた。